増える”カスハラ”、カラオケボックスをどう守るか
1. カスハラってなに?
近年、接客業で深刻化している「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。
理不尽なクレームや過度な要求は、従業員を疲弊させ、離職の原因にもなっています。
背景には、消費者意識の変化や「お客様は神様」という考え方が一部に根強く残っていること、さらにSNSによる情報拡散の速さがあり、小さなトラブルが一気に炎上につながることで過剰な対応を迫られるケースも増えています。
飲食や小売と同様に、カラオケボックスでも無視できない課題となっており、経営者・店長にとっては店舗を守るためにも避けては通れない問題となっています。
2. カスハラについて講習会を実施
当連合会では、カスハラ問題に業界全体で向き合うため、まずは経営層が率先して学ぶ姿勢を示しました。
本年5月14日の総会終了後、村西弁護士を講師に迎え、理事・監事を対象に約30分間の講習会を実施。
カスハラの実態や法的観点からの対応方法について学びました。
経営陣やトップが正しい知識を身につけることで、各店舗やスタッフを守る取り組みをリードし、業界全体に安心して働ける環境を広げていくことを目的としています。
※村西弁護士は、当連合会の顧問弁護士となります。
3. 講習会から学ぶカスハラへの対応
3-1.現場で起こり得るカスハラ
講習会では、カラオケボックスに限らず、接客業全般に共通して起こり得る4つのカスハラ事例が取り上げられました。
いずれも現場で従業員を悩ませ、離職の原因ともなり得る深刻な内容です。以下に代表的な4つを紹介します。
3-1-1. 長時間の不当クレーム
店長やスタッフを何時間も拘束し、通常業務を妨害するようなクレーム対応を強要するケース。
精神的な疲労と業務停滞を引き起こします。
3-1-2 SNSでの誇張・拡散
事実と異なる内容や過剰に誇張された情報をSNSに投稿し、拡散させる行為。店舗の信用を傷つけ、風評被害を生み出すリスクがあります。
3-1-3. 過度な金銭要求
「料金を返せ」と執拗に迫るなど、正当性のない金銭返還を求める行為。
対応を誤れば不必要な経済的損失につながります。
3-1-4. 過剰なサービス要求
「客室に若い女の子を連れてこい」「常連なのだから特別な対応をしろ」といった過度なサービスを繰り返し求めるケース。
従業員の心的負担を高め、離職の要因にもなります。
3-2.カスハラは違法行為である
村西弁護士は、「カスハラは単なるクレームではなく、場合によっては違法行為である」と指摘しました。
そのうえで、毅然と線引きを行うことや、トラブルが起きた際には記録を残すことの重要性を強調されています。
そして、スタッフ個人に責任を押し付けず、経営層が組織として守る体制を整えることが必要であるとも述べておられました。
4. スタッフを守るため、カラオケ業界としてどう向き合っていくか
業界としては、カスハラに対してしっかりと対応していくという流れが求められています。
当協会としても、カスハラは単なる店舗レベルの課題ではなく、業界全体で毅然とした姿勢を示すべき問題であると考えています。
講義を通じて改めて確認されたのは、「働く側が安心・安全に働ける業界づくり」こそが私たちの使命であるということです。
カラオケ業界に携わる経営者や店長、そしてアルバイトスタッフを含むすべての人たちが、心身に不安を抱えることなく業務に集中できる環境を整える。
その実現に向けて、当協会は今後も会員と共に取り組んでいきます。
当協会は事例共有や啓発活動を通じて、カスハラに対する共通認識を広めるとともに、各店舗が安心して相談・連携できる基盤を整えていきます。
そして「カスハラは許されない」という明確なメッセージを業界全体で発信し続けることで、スタッフを守り、ひいては業界の持続的な発展につなげていきたいと考えています。